『かようびのごちそうはひきがえる』 | ちわわ図書館

『かようびのごちそうはひきがえる』

ラッセル・E・エリクソン、ローレンス・D・フィオリ絵、

佐藤涼子訳

『かようびのごちそうはひきがえる』

個人的お気に入り度:★★★



読みもの。

「ひきがえる とんだ大冒険」シリーズの第1巻。


そうじが大好きなウォートンと、料理が得意なモートンは、

ヒキガエルの仲良し兄弟。


今は冬ごもり中だが、

モートンの作った「かぶと虫の砂糖菓子」を気に入ったウォートンは

トゥーリアおばさんにも砂糖菓子を持っていってあげたいと言い出す。


モートンはヒキガエルが真冬にでかけるなんて、と反対するが、

ウォートンは言い出したら聞かない。

目のつんだセーター3枚と厚い上着4枚を着込み、

ふかふかの手袋2組に耳あてつき帽子と、

完全防寒装備でスキーをはいて出発する。


道中シロアシネズミが雪に埋まっているのを助けると、

ネズミは森を抜けていくというウォートンを心配し、

一族のしるしである赤いスカーフをくれる。

森にはたちの悪いミミズクがいるというのだ。


果たして、ネズミの心配どおりに

ウォートンはミミズクにつかまってしまう。


ミミズクはウォートンを巣穴に連れて行き、

5日後の火曜日、ミミズクの誕生日に、

ごちそうとしてウォートンを食べる、という。


ウォートンはつれてこられるとき足を痛めていたし、

巣穴は高いかしの木の上。

逃げられっこないと思ったミミズクは、

火曜日までは好きなことをしていればいいと言う。


そこでウォートンは、ロウソクをともし、

お茶で一息いれて落ち着くことにする。

名前なんかないというミミズクに、ジョージという名前を決めさせ、

ウォートンはジョージにもお茶を入れ、おしゃべりをする。


翌日からウォートンは部屋の片付けやそうじをし、

毎晩お茶を入れてふたりでおしゃべり。


ふたりの距離は少しずつ縮まっていくようだが、

もちろん捕食者と獲物という関係がおわったわけではない。

ウォートンは、もしかするとジョージはぼくを食べないかも、

と思いながらも、

逃げ出す方法を模索するのだが・・。


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ウォートンとジョージの関係が、

徐々に食うものと食われるものから友だちに変わっていく様子が

ちゃくちゃくと描かれている。


ウォートンのとても前向きで、

思いやりにあふれたキャラクターに惹かれる。

5日後に食べられることになって最初にしたことが、

お茶を入れることなのだから面白い。


そのほかにも

・思いついたら行動しなくてはいられないところ

・片方ずつ目をとじて考え事をするところ

・天敵にあたるジョージに対しても礼儀正しいところ

など、ウォートンには魅力的に思えるところがいくつもある。


一度は逃げる手段を失って絶望しかけるウォートンだが、

助けの手をかりて逃げ出しかける。

しかし、ジョージの危機を知ったウォートンは・・・。

結末もこうなったらいいなと思っていた展開で、ちょっと感動した。


それにしても、世の中がウォートンみたいににくめないカエルばかりだったら、

ヒキガエルを食べて生きている動物たちは困るだろうなあ。



ラッセル・エリクソン, 佐藤 凉子, ローレンス・ディ・フィオリ
火よう日のごちそうはひきがえる