『レンヒェンのひみつ』
ミヒャエル・エンデ、J.チャペック絵、池内紀訳
『レンヒェンのひみつ』
個人的お気に入り度:★★★
レンヒェンの悩みは、両親が「ききわけがない」 こと。
アイスをねだってもだめ
(実はすでに3つも食べた後なので当然なのだが)、
くつみがきをたのんでも自分でやりなさいと言われるし、
海へ行きたいと言っても、今年は山だとにべもない。
頭にきたレンヒェンは、交番で魔女の住所を尋ねる。
魔女の魔法で、両親に言うことをきかせようという魂胆。
「雨ふり町」 の広場にある、
階段だけ5階分の上に屋根裏部屋の載った形の、
魔女の家をたずねる。
彼女はそこで魔女に、魔法の角砂糖をもらう。
それを食べたが最後、彼女の言うことをきかなければ、
そのつど体が半分の大きさになるというのだ。
魔法の値段はなんとタダ。
「一度目は、ただと決まっている。
しかし、二度目は、目だまがとびでるほど高いよ。」
二度目なんてあるもんですか、とレンヒェンは帰宅後、
両親のお茶に角砂糖を入れて飲ませる。
すると本当に、レンヒェンの言動に反対するたびに、
両親の体の大きさは半分になるので、
じきに10センチぐらいの大きさになる。
やりたい放題の生活を楽しむレンヒェン。
しかし、雷がこわいときに両親のベッドにもぐりこむことも、
家に帰ってきてもドアをあけてもらうこともできないことに気づき、
次第に不安・後悔がつのっていく。
そんなとき、魔女、フランツィスカ・フラーゲツァイヒェンから
いい加減に意地を張るのはやめたら?という手紙がきて・・。
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子どもだって、親や大人たちが「言うことを聞いてくれない」と
不満に思うこともあるのだ。
そんな子どもの1人であるレンヒェンが、両親に呪いをかけ、
両親が彼女の言動に異をとなえるたびに
「プスー」 と空気が抜けるような音がして、
両親が小さくなっていくのが愉快。
考えてみれば、人が人を自由にあやつれるなんて、
けっこう恐い話なのだが、
相手は主人公の女の子の言うことを聞いてくれない、
にっくき(?)大人。
前半はこの逆転を、存分に楽しむのが正解かもしれない。
しかし、この本は本来寓話的なお話で、
このあとレンヒェンは反省し、魔法を解くために
自らを犠牲にすることを選ぶことになる。
犠牲とはいっても、最後にはハッピーエンドになるのだが。
愉快(途中は主人公が調子に乗ったりするので、
ちょっとイライラもするが)なお話だが、それでいて、
親子の間でのコントロールのありかたなどについて、
ちょっと考えさせられた。
全編敬語とそうでない文の入り混じった文で書かれた、
実験的な文体になっている。(日本語)
絵も独特で、不思議な感じ。