『しっぽのきらいなネコ』
南部和也、いまきみち絵
『しっぽのきらいなネコ』
個人的お気に入り度:★★★
- 南部 和也, いまき みち
- しっぽのきらいなネコ
自分が黒いことを気に入っていた黒猫が、
ある日、しっぽの先が黄色くなっていることに気づく。
黄色い部分はどんどん広がり、じきにしっぽ全体が黄色くなる。
「おまえなんかきらいだ。きいろのシッポなんておかしいよ」
と黒猫がしっぽに言うと、しっぽはしっぽで
「わたしもくろいネコなんてきらいだわ 」 と答える。
ただ黒くないだけでも黒猫には十分気に入らないのに、
黄色いしっぽはとんだへそ曲がりだった。
あいさつするとき、ふつう猫はしっぽを立てるのに、
黄色いしっぽはだらりと下がったまま。
ネズミをまちぶせしても、
しっぽが目立つ色なのでネズミに逃げられてしまう。
そのうえおしっこをすると、しっぽが動いて
ガールフレンドの白猫にもかかってしまうというしまつ。
黒猫が注意しても、
「わたしはうごきたいときにうごくのよ」 と、どこ吹く風。
頭にきて追い掛け回しても、つかまえられるわけがない。
なにせ敵は自分のお尻に生えているのだから。
堪忍袋の緒が切れた黒猫は、
友だちに頼んで、しっぽにかみついてもらうことにする。
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黄色いしっぽがどうしてもゆるせなかった黒猫が、
最後にはお互いに受け入れあい、
折り合いをつけて生きることを学ぶお話。
黄色いしっぽは黒猫にとって、
自分自身の一部のようでもあるし、まったくの別人格のようでもある。
しかし、黄色いしっぽと黒猫は一体なので、
黄色いしっぽが痛ければ、自分も痛いのだ。
今思いついたのだが、そうすると、
もし痛くなければ、しっぽを切り離すことを選ぶ、
という選択肢もあったのかな?
でも、黄色いしっぽはそこまでいやなやつじゃないのだし、
悪性の腫瘍というわけでもない。
痛くないとしても、やっぱり同じような結末になったことだろう。
何はともあれ、
自分のしっぽといがみあう黒猫がなんとも可笑しい。
しっぽを追いかけてぐるぐる回る猫を見て思いついたのかな。