『あいうえおの本』
安野光雅
『あいうえおの本』
個人的お気に入り度:★★★
子どもの頃に持っていた(絵)本。
表紙のひとつひとつに50音一文字ずつ書かれている
ひきだしに「何が入っているんだろう」ととても惹かれて、
家族の誰かに買ってもらった。
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50音の1文字1文字を、
木でできたひらがなの絵と
その文字で始まる物たちの絵で紹介した、
図鑑+辞書的な絵本。
左ページに木のひらがな、
右ページに物の絵があり、
そのどちらも枠で囲まれており、
枠もまた、その文字で始まる道具や動植物でてきている。
「日本の伝統的な形と、ことばとを結びつけたかった 」
(あとがきより)
というようなコンセプトのもと、
かとりせんこう、うなぎ、御輿、家など、
日本独特の物や、
あるいは外国に同じものがあっても日本独特の形をもつもの
(たとえば家なら昔のわらぶき屋根だったり)
などが、意識して描かれている。
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精緻でリアルに描かれた絵がすばらしい。
そのくせ、遊びの要素が随所に盛り込まれているのが楽しい。
リアルなおみこしの中にリアルなみかんが入っていたり、
安野氏お得意の騙し絵になっているものも。
やきいもやぬけがらなど、
メインのモノを選ぶセンスもおもしろくて感心。
また、たぶん子どもの頃読んだときには気づかなかったが、
「か」の文字にかすがい、「く」にくぎ、
「さ」の表面にさるすべり、「し」はしばってあるなど、
木でできた文字にも、その文字で始まるモノが使われたりして、
どこまでも楽しませてくれる。
サービス精神旺盛な本なのである。
ほとんどの登場するものの名前は巻末の「てびき」に載っているが、
載っていないものもあるので、さがす楽しみもある。