『おんぶはこりごり』
アンソニー・ブラウン、藤本朝巳訳
『おんぶはこりごり』
個人的お気に入り度:★★★
- アンソニー ブラウン, Anthony Browne, 藤本 朝巳
- おんぶはこりごり
ピゴットさん一家は、すてきな家に住み、
表面上は幸せに暮らしていた。
しかし、実際のところ、ママは幸せではなかった。
ピゴット氏と、2人の息子たちは、ご飯をようきゅうするばかりで、
家のことを何もしない。
ママは皿洗いにベッドメイクやそうじ洗濯、
すべてを済ませてから仕事にでかけたり、眠ったりするのだった。
ある日、みんなが学校や会社から帰ってくると、
「ぶたさんたちのおせわはもうこりごり!」
という置き手紙を残し、ママは家出していた。
すると絵のうえでの3人の外見もブタになってしまう。
3人は料理もそうじも洗濯も自分たちでしなければならなくなるが、
馴れない仕事なので、大変だし、料理のできばえも最悪。
何日かすぎて、部屋には食料がなくなり、すっかり汚くなってしまう。
地面をはいずり食べ物をあさっているときに
やっと帰ってきてくれたママを、3人は
「おかえりなさいませ、おかあさま 」
と、涙まじりに歓迎するのだった。
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どんなに仕事がよくできても、頭が良かったり、外ではいい人でも、
家の中で身の回りの何もかもを家族におしつけてしまってはいけない。
かなりのことを頼っているなら、まずは感謝をするべきで、
決してピゴットさんや息子たちのように
「ごはんまだー?」 なんて言うだけではいけない。
なんていう教訓ももちろん入っているのだろうし、
そうだそうだ!と思うのだが、
一番の見どころはやっぱり「ブタ」 。
到るところにブタの顔や姿が隠されていて、
初めはふつうだった壁紙の花もようやピゴットさんの胸の丸い飾りなどが
ブタのかたちになり、
ピゴットさんの影もブタになり、
ママが出て行ったときには3人がすっかりブタの姿になってしまうのが面白い。
訳者あとがきによると原題は「PIGGY BOOK」 で、
英語ではおんぶのことをpiggy back といい、
ひっかけているらしい。
そういえば、ピゴットさんのつづりも、Pigで始まると思われ、
ここにもブタが隠れているのだった。