ちわわ図書館 -7ページ目

『おばけのひっこし』

さがらあつこ、沼野正子絵

『おばけのひっこし』
個人的お気に入り度:★★★


京の都の郊外の小さな家に、

おとど(身分の高い男の人)とその家族が住んでいた。

家が狭いので困ったおとどは、

都の近くの一軒の空き家に引っ越そうかと、下見に行く。


恐がるお付きを帰して、ひとりで泊まってみるおとど。

その家にはおばけたちが住んでいて、

おとどを追い出そうと、次々におどかしにかかる。


ところが、
女の子のおばけ「ほたるひめ」が目の前をゆらゆらしても、

男の子のおばけ「べんべろべえ」があかんべえをしても

おとどはちっとも恐がらない。

首の長い「くびひょろりん」や
火の玉のおばけ、「めらめらぼう」が出て行ってもものともしない。


とうとうおばけの親玉の「おばけのおきな」が交渉に乗り出し、

おばけたちが引っ越すことで合意に到る、

というお話。


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『おばけやしきへようこそ!』  を読んで、

おばけを恐がらない人間は

おばけにとっては脅威なのだというのがよくわかったが、

この絵本でもやっぱり、全然怖がらないおとどに

おばけたちのほうがたじたじとなっている。


おとどには参ってしまったおばけたちだが、

都から遠くても、家がせまくてもおばけだから平気、

というところはちょっとうらやましい。



さがら あつこ, 沼野 正子
おばけのひっこし

『ちいさなちいさな王様』

アクセル・ハッケ、ミヒャエル・ゾーヴァ絵、

那須田淳、木本栄子共訳

『ちいさな ちいさな王様』

個人的お気に入り度:★★★


アクセル ハッケ, Axel Hacke, Michael Sova, 那須田 淳, 木本 栄, ミヒャエル ゾーヴァ
ちいさなちいさな王様

以前から存在は意識していたものの、

micaさんのブログ で記事を見て、読もう読もうと思いつつ、

さらに月日が流れ(笑)、今頃読んでみました^^

micaさんの記事はこちら → 『ちいさなちいさな王様』


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全体の量としては少し長め。



「僕」 のひとさし指くらいの大きさの小さな小さな王様、

十二月王二世」 は、

しばらく前から僕の家に遊びにくるようになった。

王様はおなかの出っ張った立派な大人なのに

子どものようなところがある。
クマの形のグミキャンディ、グミベアーをこよなく愛し、
遊んだり空想したりするのが大好き。

王様の国では、生まれたときには大きくて何でも知っていて、

色々な仕事をしなければならず
時間がたつにつれてだんだん小さくなり、

色々なことを忘れていき、そのうち仕事から解放される。
最後には小さくなりすぎて、見えなくなってしまうのだという。


そんな王様との、

もし不死になったとしたら、などを想像したり、

王様の絵を売りに行ったり、

王様と一緒にいつもの通勤の道を歩いたり・・

といった、いくつかのエピソードが綴られている。

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王様の出生の秘密がなんともロマンチックで、

命がどこへゆくのかなどについて、考えさせられる。


また、空想したり遊んだりすることがとても価値があることで、

小さくなるほど偉くなるから、

大きな人たちに色々と質問して

答えを聞いたそばから忘れてもかまわない、

などという王さまの国での常識は、

私の考える一般的な価値観とはほぼすべて逆で、
なるほど、そう考えるのも悪くないなあと感心してしまった。


空想したり遊んだりすることは、

現実的な仕事よりも大事というわけでもないのだろうが、

少なくとも同じくらい価値のあることだと思う。

それなのに日々の生活に追われて、

そういうことをあまりに後回しにしてはいないだろうか、

と自問させられた。


夢をしまっておく箱や、プードル救い機など、

出てくるアイテムもおもしろい。


『いつもちこくのおとこのこ--ジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー』

ジョン・バーニンガム、谷川俊太郎訳

『いつもちこくのおとこのこ--ジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー』

個人的お気に入り度:★★★


新歌さんのブログ の記事がきっかけで読んでみました。

ありがとうございます^^

新歌さんの記事はこちら → そんなことあるわけないよ



ジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシーは

通学途中にワニに襲われ、

手袋を投げあたえてなんとか逃げ出す。


教室で先生に「マンホールからワニが・・」 

と事情を説明するが、先生は信じてくれず、
罰として

もうワニのウソはつきません、手袋もなくしません

と300回書かされるのだった。

その後もライオンにおそわれたり、

高潮にさらわれそうになったりして

そのたびに遅刻するのだが、

先生は事情を信じてくれずに罰を与える。

しかしある日、ジョンが時間通りに教室に行くと・・・。


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まさに溜飲を下げるという思いのオチ。


人間、自分の目の前で起きたことしか、

なかなか信じられないものだ。
だから先生がジョンを信じられない気持ちも理解できるが、


・・でも私の中では、やはりざまあみろと思う気持ちの方が強い^^;

谷川 俊太郎
いつもちこくのおとこのこ―ジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー

『イヌのしんぶんこうこく』

ロリー・S・ラーマン、アリソン・バートレット絵、

山口文生訳

『イヌのしんぶんこうこく』

個人的お気に入り度:★★★


ロリー・S. ラーマン, Rory S. Lerman, Alison Bartlett, 山口 文生, アリソン バートレット
イヌのしんぶんこうこく


田舎生まれの犬、ニーロは、都会で暮らすのが夢。

大きくなって電話が使えるようになると(!)、

さっそくロンドンの新聞社に電話して、
飼い主募集の広告を出してもらった。

条件は、メガネをかけていて、

できれば12才以下であること。

沢山の手紙が届き、

ニーロは友だちのジョージに手伝ってもらい、

必要な「諸条件」 を決めて、それにもとづいて

手紙を「だめ」 と「いいかも」 により分ける。


ジョージは赤と白のしま模様のオーバーオールを着た男の子で、

ニーロが生まれたときに会いにきてくれて以来の仲良しなのだ。


色々検討した結果、ニーロは

ロンドン中の美術館や劇場に連れて行ってくれ、

誕生日にはミルクセーキを飲ませてくれ、

毎日ブラシをかけてくれるという女の子に飼われることに決める。


ジョージは賛成してくれるが、なぜかちょっとさびしそう。


荷造りをしながら、

ニーロは以前決めた「諸条件」 を振り返る。


ぼくがいられる場所があること 

どうぶつにしんせつであること 

心のやすまる家庭があること 


そして、本当にぴったりな友だちが

すぐそばにいたことに気づくのだった。


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大切なものごと、近くにいる友だちの良さは、

当たり前に感じてしまい、

忘れてしまうこともあるもの。


いたずらにニーロの行動や飼い主候補を批判したりせず、

終始ニーロの幸せを願うジョージは

本当にすてきな友だちだなあと思う。



それと、これは書いた人が意図していないテーマかもしれないが、

ニーロは飼い主を探すために自分で行動を起こしたが、

実際には犬は飼い主を選べないことが多いもの。

一飼い主として、ペットのよき友でありたいと改めて思ったりもした。


ところで、6週間で「大きく」なって、

新聞社に電話をかけるニーロ。

犬の寿命は人間より短く、大人になるのも早いけれど、

それにしてもすごい。



『ひいらぎはかせとフロストマン』

たむらしげる

『ひいらぎはかせとフロストマン』

個人的お気に入り度:★★★


たむら しげる
ひいらぎはかせとフロストマン


ひいらぎはかせは、世界一の発明家。

あるときはかせの住む町に、
なんでもカチンコチンに凍らせてしまう氷の巨人、

フロストマンが現われた。

でんきコート」 を着込んで町にでてみると、

人もどうぶつも、乗り物も建物もみんな凍りつき、
すっかり氷の町に変えられてしまっていた。


助手のロボットも凍らされて困ってしまう博士だが、

凍った池を見て、あるアイディアを思いつき、その実現のため

氷でできたロボット、「アイスマン」 を大量生産するのだった。

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氷を溶かし、フロストマンを追い払うそのアイディア、

スケールが大きくてびっくり。


シリーズものみたいなので、

他の絵本ではどんなアイディアが飛び出すか、

読んでみたくなった。


『おばけやしきへようこそ!』

キッキ・ストリード、エヴァ・エリクソン絵、

オスターグレン晴子訳

『おばけやしきへようこそ!』

個人的お気に入り度:★★★


キッキ ストリード, Kicki Stridh, Eva Eriksson, Haruko ¨Ostergren, 晴子 オスターグレン, エヴァ エリクソン
おばけやしきへようこそ!


深い森の奥の大きなおばけ屋敷に、

きゅうくつなくらいおばけが大勢暮らしていた。


そこにある日、両親とはぐれ、道に迷った人間の女の子がやってきて、
とても礼儀正しく、一晩の宿を求める。


おばけたちははりきって女の子をおどかそうとする。

しかし、ことごとく失敗する。


ヘビやクモ、カエルやカタツムリの入ったスープをすすめると、

けっこうです。 わたし、これがきにいるとはおもえないの。

それより、ふつうのバタつきパンをください 

べとべとした怪物と握手したときには、

指を洗わなくちゃいけないわ、と注意し、


ホールで大勢のおばけが一斉におどかそうとすると

うるさいと眠れないたちなので、みなさんも早く寝てね、

とにべもない。

おばけたちはとうとう女の子を、

おばけたちも普段は近づかないという、恐ろしい部屋につれていく。

それでも女の子は平気だった。


無事に翌朝旅立ち、両親と再会する女の子。


女の子の存在は、

当のおばけ屋敷で長年語り継がれることになるのだった。


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おばけたちと、女の子との

テンションの違いが面白い。


とても礼儀正しく、

しつけの行き届いているといった感じの女の子。


彼女にとって、おばけたちは

ちょっと無作法なところがあるけれど

一夜の食事と宿を提供してくれる恩人にすぎず、

恐いおばけという意識はまるでないのであった。


映画『モンスターズインク』 は

おばけをこわがらなくなった子どもたちを

脅威に感じているおばけたちの話だったが、


たしかにおばけにとっては、

おばけをこわがらない人ほど恐ろしいものは

ないのかもしれない。


また、人はこわいものや、苦手なものや人に対して、

とかく過剰反応してしまいがちだが、

彼女のように礼儀正しく、かつ毅然とした態度で対応することで、

必要以上に動揺せずに、

それらとつき合うことができる場合が多そうだ、

とも思った。



『にんじゃにんじゅろう』

舟崎克彦、飯野和好絵

『にんじゃにんじゅろう』

個人的お気に入り度:★★★


舟崎 克彦, 飯野 和好
にんじゃにんじゅろう


「くろくもにんじゅろう」 は、忍者の家の1人息子。


毎日忍者学校で、
音を立てない歩き方やのろしの上げ方、

合言葉や水のある場所の探し方、動物の鳴き真似など、

彼に言わせれば「地味」 なことばかり勉強している。

ところがある日、学校からの帰り道、

誰かにつけられていると感じたにんじゅろう。
家に帰り着くと、いつもならカギのかかった玄関が開いていて、
両親を呼んでも出てこない。

さては両親が、自分の忍術をテストするつもりだな。

と考えたにんじゅろうは、

覚えたての忍び足で家の中を探し回るが、


手裏剣は投げてくるわ、声がつくり声だったりと、

この「両親」 、どうも怪しい。

屋敷の仕掛けでやっつけてみると・・・。


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かんちがいで恐れもせずに悪党をつかまえてしまった

というお話。



忍術を紹介する絵巻(ちょっとしたポスターぐらいの大きさ)や

巻末に「にんじゃ親子問答」もあり、

そんなに詳しく書いてあるわけではないが、楽しく読めた。


ちなみに親子問答のほうの参考資料は

『乱太郎の忍者の世界』 だそう。



『ともだちや』

内田麟太郎、降矢なな絵

『ともだちや』

個人的お気に入り度:★★★★


内田 麟太郎, 降矢 なな
ともだちや

再読。


1時間100円の商売、「ともだちや」 を始めたキツネ。


ウズラのおかあさんに呼ばれたと思ったら

赤ちゃんがねむったばかりなの 」 と注意される。


そこで今度は小声で歩いていると、
クマが何屋だか聞こえないままに声をかけてきて、

雇ってもらえることになったはいいが、
相手がクマだけにちょっとこわごわ
一緒にイチゴを食べたり、蜂蜜を食べたり。

疲れた様子のキツネに、今度はオオカミが

おい、キツネ 」 と声をかける。

オオカミと楽しくトランプをしたあとに、

キツネはお代を頂戴しようとするのだが・・。


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この後の展開で、

キツネが本当はいかにさびしく、

友だちを欲していたかがわかり、ほほえましくなった。


絵もかわいくて、

なんだかオシャレな感じがして好き。


有名なシリーズなのだが、

私はこれ一冊しか読んだことがなく、

新歌さんのブログ で始めて他にもあることを知った。


友だちってなんだろうと、

色々な角度から考えさせてくれそうなこのシリーズ、
いずれは全作読んでみたい。


『いぬうえくんとくまざわくん1』

きたやまようこ

『いぬうえくんとくまざわくん 1

いぬうえくんがやってきた』

個人的お気に入り度:★★★


きたやま ようこ
いぬうえくんがやってきた―いぬうえくんとくまざわくん〈1〉

くまのくまざわくんはある日はらっぱで

犬のいぬうえくんに出会い、友だちになる。


一緒にボール遊びや水浴び、

ひなたぼっこなどをしたふたりは

くまざわくんのうちへ。

いぬうえくんが、「友だちは一緒に暮らしたほうがいい」

と言うので、2人は一緒に暮らすことになる。

いぬうえくんは「~~は○○したほうがいい」 

というのが口癖のようである。

2人は家の中の部屋やイスや食器を分け、

そして仕事も分担する。


いぬうえくんと暮らすことによって、

今までは当たり前に思っていたことが、

実は自分らしさだったんだと気づくくまざわくん。

しかし、いぬうえくんに

食事の仕方をあれこれ言われたくまざわくんは、
かっとなって彼を追い出してしまうのだった。


いぬうえくんはもう戻ってこないのだろうか。

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いぬうえくんには友だちはこうあるべき、

という条件が沢山あるようで、


ともだちはいっしょになにかをしたほうがいい

と空を見上げたり、

ともだちはひからびないほうがいい

と水浴びをしたり、

ともだちはみずくさくないほうがいい

とそのあとすぐに体を乾かしたりするのが面白い。


冷静に考えると、このいぬうえくん、

結構図々しい居候のような気もするのだが、

出て行くとやっぱりさびしいし、

はちみつたっぷりのお茶を飲みながら涙する

くまざわくんに共感して、

ついほろりとさせられるのだった。



『はだかのサイ』

ミヒャエル・エンデ、マンフレート・シュリューク絵、

矢川澄子訳

『はだかのサイ』

個人的お気に入り度:★★★


ノータリン・ノルベルト、桁外れにうたぐり深いサイだった。
体全体をよろいで覆い、ふつうなら1本のツノが2本ある。
そして 「ひとをみたらどろぼうと思え 」 が口癖。

沼のほとりに住んでいるノルベルトは、
「水浴びを禁ず」 という看板を立て、
小鳥のさえずりまでも許さない。

沼の水を利用していた他の動物たちは

困って会議を開き、ノルベルトをどうするか相談するが、

決まらないうちにノルベルトが乱入してきて会議は中断。

みんな夜のうちにこの土地を逃げ出すのだった。

唯一残ったのは、ウジクイのカールヘン

よく水辺でカバやなんかの背中に止まっていたりする、

くちばしの赤い、黒い小鳥だ。


彼は小さくてすばしっこいのでノルベルトにつかまる心配もなく、

ノルベルトのほうでもちっぽけな小鳥で相手にしないので、
逃げ出す必要がなかったのだ。

カールヘンはひとつノルベルトをこらしめてやろうと一計を案じ、
支配者や征服者が必ず立てる銅像を

あなたも立ててはどうか、と口車にのせる。


周りに彫ってくれるものもおらず、

自分でも彫れないのなら、自分が銅像になればいい。

カールヘンにそそのかされて、

ノルベルトは自ら銅像になるべくポーズをとるのだった。


のまず食わずで立ち続けたノルベルトは次第にやせ細り、

ついに我慢できなくなって・・・。


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オチがなんとも滑稽で、しかし考えさせられた。


人間不信のヨロイは、

時として本人が見てもぞっとするような代物なのだろう。


ノルベルトがなんだか気の毒にさえ思えてしまう。

他人ごとには思えないからかもしれない。



矢川 澄子, ミヒャエル・エンデ, マンフレート・シュリューター
はだかのサイ